「文系にするか?理系にするか?」
高校生が大学進学を検討するにあたって最初に直面する悩みが、文理選択ではないでしょうか。
悩みながら決断をしたという声を耳にすることは、少なくありません。
昨今では文理選択に関して、「なぜ女子の理系進学が少ないのか?」といったトピックスが注目を集めています。
大学では理工系学部で「女子枠」を増加させる、といった動きもみられる中で、どんな課題があるのでしょうか?
今回は、Diversity&Inclusion-誰もが自身の能力を発揮できること-を目標とし、STEM(理系)女子奨学助成金の提供等を行っている、公益財団法人山田進太郎D&I財団様と、共同で調査を実施しました。
文理選択の決定時期や決定理由、悩みなどを深掘りし、高校生の文理選択における実態や課題に注目した結果をご紹介します。
◆本調査の概要(1回目)
調査対象 : 全国の「Studyplus」ユーザー(高校生、大学1年生、大学2年生)
回答者 : 3,297名、うち2,740名が文理選択済みの学生
調査時期 : 2023年6月29日〜6月30日
調査方法 : 学習管理アプリ「Studyplus」上でアンケート回答を依頼し、オンラインで回答を回収。
調査内容 : 文理選択の時期、決定理由、情報収集方法 など
◆本調査の概要(2回目)
調査対象 : 全国の「Studyplus」ユーザー(高校生、大学1年生、大学2年生)
回答者 : 3,292名、うち2,601名が文理選択済みの学生
調査時期 : 2023年7月12日〜7月13日
調査方法 : 学習管理アプリ「Studyplus」上でアンケート回答を依頼し、オンラインで回答を回収。
調査内容 : 文理選択で後悔したこと など
①中学3年生時点で半数以上は、文理選択で迷う “グレーゾーン”に
文理選択の決定時期
多くの学生は、高校1年生の秋~冬にかけて文理選択の決断を迫られます。
実際の決定時期は、どのような実態なのでしょうか?
今回の調査では、特に中学3年生時点に注目しました。
文理選択の1年前時点で、選択に対して未確定要素の多い学生を “グレーゾーン” と定義し、その状況を確認していきました。
"グレーゾーン" の定義は以下の通りです。
①文系・理系を明確に選択できていない学生
調査項目「中学3年生の頃、文理選択についてどう考えていましたか?」において、「どちらでもない」「わからない・まだ決めていない(迷っている)」「どちらかといえば文系」「どちらかといえば理系」と回答した学生。
②文系・理系を明確に選択できているが、最終的な進学先が逆転した学生
調査項目「中学3年生の頃、文理選択についてどう考えていましたか?」において、中学3年生時点で「文系」だったが最終的に理系に進学、中学3年生時点で「理系」だったが最終的に文系に進学した学生。
まずは、進学決定時期から、確認していきます。
理系は、中学生時点で37.1%が決定済みでした。
文系は、文理選択の決定タイミングが理系より遅い傾向が見られます。
続いて、中学3年生時点のステータスを、文系・理系それぞれ確認します。
"グレーゾーン" のボリュームゾーンは、どうなっているのでしょうか。
文系生徒は約6割が”グレーゾーン”、理系生徒は約半数が”グレーゾーン”という結果でした。
多くの生徒が中学3年生時点では "グレーゾーン" にいながら、その1年後には進路決定しているという実態が分かりました。
②理系科目への苦手意識が、文理選択に大きな影響。特に女子に顕著な傾向。
文理選択の理由
続いて、文理選択の理由を深掘りします。
まずは文系、理系それぞれの理由をまとめました。
理系の選択理由は、「理系で学べる内容に興味があるから」「理系科目が好きだったから」といったポジティブな理由が上位に並んだ一方、文系の選択理由は「理系科目が苦手だったから」が最多という結果になりました。
文系生徒は、理系科目への苦手意識が大きな理由となっていることが分かります。
つづいて、文系の男女の結果を確認します。
男子は文系科目への興味・好み・得意さが上位となった一方、女子は「理系科目が苦手だったから」が最多となりました。
他の項目を確認しても、理系に対するネガティブな理由が、女子はポイントが高くなっていることが分かります。
続いて、理系の男女別に着眼点を置きます。
男子は理系科目への興味関心が上位になった一方で、女子は「理系進学した後の就職・職業などの将来像が見えたから」が最多となりました。
他も、将来的なキャリアを見据えた理由が、男子より割合として高い傾向が見られます。
男子は科目への興味関心が理由となる一方で、女子は文系を選ぶ理由が「理系への苦手意識」、理系を選ぶ理由が「将来像が見えた」という傾向が顕れる結果となりました。
③ 約半数が文理選択に悩み。理由は「将来像」「苦手意識」
文理選択の悩み
続いて、文理選択をした生徒の悩みを深掘りします。
約半数が、悩みや迷いがあったと回答。
具体的には、どんな悩みだったのでしょうか?
文系は、男女ともに将来性への不安を指摘する項目が上位。
理系は「苦手科目」の悩みが最多、特に女子は約6割が回答するという結果となりました。
④約半数が教員の指導を受けて自信や意欲が高まったと回答する一方、半数はサポート改善の余地
文理選択の情報収集、教員からのサポート
悩みを抱える生徒たちへの学校や教員からのサポート実態は、どうなのでしょうか。
深掘りしていきます。
まずは、主要な情報源を確認していきます。
主な情報源は、学校の先生(担任)。
半数以上の回答を得ました。
続いて、学校からのサポートに対する感想です。
約半数が自信や意欲が高まったと回答する一方、残り半数はサポート改善の余地が見られる結果です。
満足度に関しても、同様の結果が見られました。
満足していない生徒に、その理由を聞きました。
「説明が不足」「選択肢が限定的」が3割超。
さらに「進学実績優先に感じた」も3割弱存在するという結果です。
⑤文理選択を後悔する生徒も一定数。学校から選択後の将来像や勉強内容を伝えるサポートが必要か。
文理選択を振り返って
最後に、文理選択を振り返っての感想です。
後悔したかどうか、については、全体で2割程度が「後悔した」と回答しました。
また全体に文理選択時に知りたかった要素を尋ねたところ、以下のような結果となっております。
将来との繋がり、具体的な勉強内容をしりたかった、という声が表れる結果となりました。
多くの学生が悩みながら意思決定する文理選択。
今後も、Studyplusトレンド研究所では注目し、学生たちの生の声を伝えていきたいと考えております。
<共同調査先のご紹介>
■ 公益財団法人山田進太郎D&I財団について
誰もがその人の持つ能力を発揮し活躍できる社会の実現に寄与するために、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進する目的で、メルカリCEO山田進太郎が2021年7月に設立した公益財団法人です。
特に、STEM(理系)のジェンダーギャップに注目し、2021年より女子中学生/高校生がSTEM(理系)キャリアを前向きに検討し、積極的に自己決定するための機運を創ることを目的に奨学金事業を開始しました。2023年からは、さらに活動の幅を広げるべく、対象者となる女子生徒を取り巻くステークホルダーとなる保護者や学校等教育機関、企業、行政/省庁の皆様と連携しながら、各種教育支援イベント等を通じて若い女性の成長と社会進出を支援しています。
※STEM(S:Science / T:Technology / E:Engineering / M:Mathematics)
代表理事:山田 進太郎(メルカリ創業者、代表取締役社長兼CEO)
設立年月日:2021年7月1日(木)
公益財団法人山田進太郎D&I財団公式ウェブサイト:https://www.shinfdn.org/
■2023年度の奨学金事業について
山田進太郎D&I財団は、2023年度もSTEM(理系)進学を選択しづらい現状にある女子学生が理系キャリアを前向きに検討し、積極的に自己決定するための機運を創るため、STEM(理系)女子奨学助成金の募集を7月6日より開始しました。詳細は以下をご参照ください。
STEM(理系)女子奨学助成金募集要項:
【一般のお問い合わせ先】
公益財団法人山田進太郎D&I財団事務局
Eメール:info@shinfdn.org
Studyplusトレンド研究所では、学習管理アプリ「Studyplus」のユーザーである若者に向けて、定期的に調査を行っています。
企業・教育機関などで、若者を対象とした共同調査や研究をご希望する方は、問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
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