Studyplusトレンド研究所が2022年に実施した調査では、中高生がスマートフォンを持ち始める時期は中学1年生が最も多く(※1)、SNSを利用している中高生の割合も9割超(※2)となっており、デジタルツールが学生の日常生活に欠かせないものとなっていることがわかります。
デジタルツールが普及した影響は、受験生の学習方法や情報収集のあり方にも表れています。2022年に実施した調査では大学受験生が “スマ勉”(=スマートフォンで勉強)する割合は97.2%という高い割合(※3)であり、大学情報も約8割が紙よりデジタル(WEB、YouTube、SNS等)で収集する(※4)と回答しています。スマートフォンが普及した2010年代より前の受験生はアナログな手段での学習や進路情報の収集が主流でしたが、現在はデジタルを活用する比重が高まっています。
Studyplusトレンド研究所では、時代の流れとともに変化した“スマホ時代”の受験生の進路決定プロセスをより詳細に掴むために、今回の調査研究を実施いたしました。
※1、※2 「通学とスマートフォン・SNS利用に関するアンケート」調査より
※3 「大学受験期のスマホを活用した学習に関するアンケート」調査より
※4 「あなたは紙派?デジタル派?アンケート調査」より
◆調査概要
調査対象 : 全国の「Studyplus」ユーザー(高校3年生・大学生等)
回答者 : 840名
【属性分類】高校3年生622名、高専4年生・5年生2名、大学1年生122名、大学2年生29名、大学3年生25名、大学4年生40名
調査方法 : 学習管理アプリ「Studyplus」上でアンケート回答を依頼し、オンラインで回答を回収。一部ユーザーを対象に、オンラインインタビューを実施。
調査時期 : 2023年12月6日〜12月8日
※本記事におけるデータは小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
現在の受験生が志望校を決定するまでのステップはどうなっている?
現在の大学受験生が志望校決定までにどのようなプロセスを踏んでいるかを調査しました。
ステップ1を確認すると、大きく2つのパターンが見られました。
「情報収集する」からスタートする割合が最も多く全体の27.4%。
次いで「大学を知る・興味を持つ」からのスタートで割合は15.4%という結果です。
ステップ1~ステップ2で記入されたデータの集計は以下の通りです。
「情報収集する」からスタートした受験生は「大学を知る・興味を持つ」に多くが移行し、逆に「大学を知る・興味を持つ」からスタートした受験生は「情報収集する」ステップに移行していることがわかります。
ステップ1~ステップ4で記入されたデータの集計をみていきます。
「情報収集する」→「大学を知る・興味を持つ」、「大学を知る・興味を持つ」→「情報収集する」双方のパターンの受験生の多くが、「比較・検討」を経て「出願・受験」へと移行していました。
本調査項目の結果から、受験生の志望校決定に至るまでのプロセスには大きく2つのモデルパターンがあると考えております。
モデルパターンA
ステップ1 「情報収集する」
ステップ2 「大学を知る・興味を持つ」
ステップ3 「比較・検討」
ステップ4 「出願・受験」
モデルパターンB
ステップ1 「大学を知る・興味を持つ」
ステップ2 「情報収集する」
ステップ3 「比較・検討」
ステップ4 「出願・受験」
Studyplusトレンド研究所では、高校生の間でスマートフォン・SNSが普及し、日常生活の中で「大学を知る・興味を持つ」機会が増えたことで、モデルパターンBに繋がっていると考えております。
<モデルパターンB事例 長野県在住・現大学4年生>
「高校入学前に勉強のモチベーション維持のために活用していたInstagramのアカウントで、好きな土地の大学に通う学生の投稿を見つけました。その方が通う大学について調べてみると、自分が取得したいと考えていた資格が取得できる大学であることを知り、志望校に決めました。」
「情報収集する」で知った大学数、「大学を知る・興味を持つ」に至ったきっかけは?
モデルパターンにおける具体的なステップ「情報収集する」「大学を知る・興味を持つ」を深掘りしました。
志望校を決めたタイミングで、名前を知っていた大学の数を聞くと、「11~20大学」が22.4%、「20大学以上」が37.7%の回答。
受験生の6割が11以上の大学を認知していることがわかりました。
その認知のきっかけは、どのようなものが主流なんでしょうか?
「学校や塾の先生からの紹介」が約半数、「学校の先輩・友達から」「家族から」が4割前後。
4番目に回答が多いのは「YouTube」で約2割となっており、それ以降もデジタルのチャネルが続きました。
スマホでアクセス可能な選択肢が上位を占めており、特にYouTubeは影響力の強さがわかります。
<YouTube活用事例1 神奈川県在住・現大学1年生>
「勉強方法や志望大学の絞り方を知りたくて、YouTubeを活用していました。河野玄斗さんや予備校講師の方のチャンネルをよく見ていました。」
<YouTube活用事例2 愛媛県在住・現大学1年生>
「オンライン家庭教師のYouTubeアカウントで特殊な学科や魅力を紹介する動画を見て、大学を知ることがありました。」
「比較・検討」から志望校を決定し、出願・受験に至るまでのプロセスは?
志望校決定の最終段階の「比較・検討」ステップ、また決定後の変化に関して調査しました。
二桁の大学を認知している一方で、「比較・検討」段階では大きく数が絞られています。
約6割が「1~3大学」であり、「4~6大学」の割合も3割弱という結果に。
検討するに至ったきっかけはどのような要素なんでしょうか?
「学部」が約8割。その後に「偏差値」「立地」と続く結果となりました。
Studyplusトレンド研究所が以前に実施した調査と、同様の傾向が見られました。
最後に、志望校の変化の変化に着目した調査結果をご紹介します。
受験期の春から秋にかけて、約半数が変化があったと回答しました。
変化の理由は「模試等の結果がよくなかった」「オープンキャンパス等に行っての気持ちの変化」が3割超となっておりました。
<春から秋にかけて学力を理由に志望校変化事例 愛知県在住・現大学2年生>
「第一志望大学の模試での判定が高校2年生までは良かったのですが、高校3年生の夏の模試でE判定になってしまったので、他の大学を検討し始めました。」
<受験直前の志望校変化事例 愛媛県在住・現大学1年生>
「大学入学共通テストを受験した後、大手予備校が実施している共通テストリサーチの結果を見て、志望校を変更しました。」
Studyplusトレンド研究所 調査所感
スマートフォンが普及する前の受験生との対比で考えると、最大の違いは大学進学に関する情報収集、認知のきっかけとなるチャネルが「デジタルシフト」した点であると言えるでしょう。
学校や塾の先生・友達や家族をきっかけに大学を知ることは昔から変わりませんが、YouTubeをはじめとしたデジタル上で多くの受験生が大学を認知しており、この傾向は “スマホ時代”ならではです。Studyplusトレンド研究所では、今後の受験生向けマーケティングにおいて、デジタル上でいかに受験生からアテンションを獲得するかが重要だと考えております。
昨今では入試形態や学習指導要領の変化もあり、受験生向けの訴求要素も変化していくことが考えられます。受験期の春から秋にかけて志望校を変更するような傾向もあります。受験生を取り巻く環境を注視し、時期や内容にも考慮したコミュニケーションがより一層求められるのではないでしょうか。
Studyplusトレンド研究所では、学習管理アプリ「Studyplus」のユーザーである若者に向けて、定期的に調査を行っています。
企業・教育機関などで、若者を対象とした共同調査や研究をご希望する方は、問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
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