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  • Studyplusトレンド研究所

探究学習で最も多い取り組み内容は「調べ学習」だが地域差あり、北海道・東北は「学校外の企業(地域・人)との連携」の割合が高い傾向に




高等学校では、2022年度から新しい学習指導要領として新科目「総合的な探究の時間」がスタートしました。

もともとは、課題解決能力や主体的な学びを育むことを目的とした「総合的な学習の時間」として実施されていました。


文部科学省が改訂した新学習指導要領では、社会の変化や教育の進歩に対応する形で、自ら考え、調べ、問題を解決する力「生きる力」の育成を重視しており、探究学習という形で取り入れられることとなっています。


総合的な探究の時間」がスタートして1年半。

高校生たちは、探究学習にどのように取り組み、またどのような印象を持っているのでしょうか。


現役高校生1,110名を対象に、「総合的な探究の時間」に関するアンケート調査を実施しましたのでご紹介します。



 

◆本調査の概要

  • 調査対象 : 全国の「Studyplus」ユーザー(高校生)

  • 回答者  : 1,110名

※高校1年生 :203名、高校2年生:426名、高校3年生:481名

  • 調査方法 : 学習管理アプリ「Studyplus」上でアンケート回答を依頼し、オンラインで回答を回収。

  • 調査時期 : 2023年8月28日〜8月30日

※本記事におけるデータは小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。


 


①「総合的な探究の時間」で最も多い取り組み内容は「調べ学習」、地域差も見られる



「総合的な探究の時間」の取り組み状況


まずは「総合的な探究の時間」の実施状況を確認します。



回答者の9割が、探究学習の時間があると回答しました。



具体的な実施内容に注目していきます。


最も多いのは「調べ学習」で8割超。

続く形で「グループ内やクラス内での発表」「グループディスカッション」と続きました。


では、地域差はあるのでしょうか?



※地域区分は以下の通りです。  北海道・東北・・・北海道、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県  関東・・・埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県  中部・・・静岡県、岐阜県、愛知県、富山県、石川県、福井県、長野県、新潟県  近畿・・・滋賀県、京都府、奈良県、和歌山県、大阪府、兵庫県、三重県  四国・中国・・・鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県  九州・沖縄・・・福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県



全体で最も多かった「調べ学習」の割合は、各地域で高い結果となりました。

北海道・東北に着目すると、「学校外の企業(地域・人)との連携」「ポスターセッション」が、他地域と比較して高い結果が出ております。




探究学習に対しての高校生たちの印象はどのようになっているのでしょうか?

全体で確認すると、「やる意味がわからない」が4割で最多。

一方、「将来、必要な能力が身につく授業」だと感じていると回答した割合も3割となりました。


以降、「何を探求していいのかわからない」「進め方がわからない・困っている」「テーマが選べない」といった悩みが続いています。


こちらの項目も、地域差を確認しました。

関東、中部、近畿では、「やる意味がわからない」が4割超と、他地域と比較して高い割合が見られました。

北海道・東北や九州・沖縄は、「何を探究していいのかわからない」「進め方がわからない・困っている」といった具体的な学習内容に関する悩みの回答や、「よくわからないけどなんだか楽しい」という回答の割合が高い結果となりました。



具体的な探究テーマ、調べ学習の方法については以下のような結果が見られました。





 

②7割近い高校生が「探究学習は将来に活かせる」と回答



探究学習と入試、将来との繋がりに関する認知状況


探究学習の成果で受験できる「探究型入試」を導入している大学も多くあります。

ここからは、探究学習と進路選択や将来の結びつきについて、高校生たちがどのように考えているかを見ていきます。


まず、入試に役立つことへの認知状況の確認です。


全体でみると4割が認知。

学年別を確認すると、学年が上がるごとに認知が上昇し、高校3年生では約半数になることがわかりました。



探究学習は入試に直結する面もある一方で、これからの時代を生きていく力を得ることを目的に実施されています。

今後のキャリアや将来に関するヒントを、探究学習を通じて得られたと感じている高校生はいるのでしょうか?

2割の高校生が、進路選択のヒントを得ることができたと回答する結果となりました。


学年別の結果は以下の通りで、高校3年生は約3割、高校1年生は2割程度ヒントを得ることができたと回答しています。



「ヒントを得ることができた」と回答した理由について自由記述を求めたところ、以下のようなコメントが得られました。


  • 進路選択の役に立った(最も多かった理由)

「行きたい学部が明確になった、研究している分野の学科に進みたいと思った」
「より起業が身近なものとなり、実践的な学習のできる大学で商学を学びたい気持ちが強まりました。」
「地方問題について調べ、より具体的に私のしたいことがわかり、志望動機に繋げられる材料になった」

  • 専門分野を深く学べた(2番目に多く見られた理由)

「自分の興味のある学問をしている大学の先生に探究の論文執筆のために話を聞きにいけて、雰囲気が分かった」
「情報学部系に興味があったため、探究でプログラミングを使用した研究をし、情報学部で行うことをイメージできた点」


  • 将来の視野が広がった

「考える力を高めることができて、物事の共通点を見つける力や本質は何なのかと考える力がついた。そのおかげで、自分が将来やりたいことの本質に気づくことができるようになった。
「自分が達成したい研究テーマについて文献を見ていく中で様々な大学の論文を見て、多角的なアプローチの仕方があることを知り視野が広がった。また、その中でどの角度からアプローチしていくか考えることが進学したい学部を決めるきっかけとなった。」

続いて、探究学習を通じて得られた力については、以下の通りです。

約半数が「考える力」「自分の意見をまとめて伝える力」「調べる力」「発表する力」で成長を感じたと回答しました。


その上で、「探求学習で培ったものは将来に活かせると思いますか?」の質問への回答は以下の通りになります。

7割近い高校生が、将来に活かせると回答しました。


その理由を自由記述で確認したところ、「はい」の回答理由では、以下のようなものが見られました。

プレゼンのための資料作りや伝える力(発表する力)、論文を書く力が育った
グループで協力して一つのことを成し遂げることで、チームワークを大事にすることができたと思うから。
ネットの情報のみに頼らず文献などを参照し、そこに自分の考えを取り入れてまとめる力がついていると思うし、自分の考えを交えてまとめる力は将来必要だと思うから。
他者視点に立って、初めて分かる物の考え方や、捉え方を学ぶことが出来たから。
自分の興味を深堀できて大学のゼミへのイメージがわいたから。
将来研究したいことの序章的なことをやっているから
人と議論する能力は社会でも今求められていることだから。

一方の「いいえ」の回答理由は、以下のようなものが見られています。

やる意味が分かっていない
将来を意識せずにやりたいことをやったので、目指しているものと違う、つながるかわからない
やりたいこととずれていた
1人で出来ることをなぜ複数人で行うかわからない
中学のほうがレベルが高かった

最後に、「自分で何かテーマを選ぶときのヒントとして、大学に期待することはありますか?」という自由記述の質問への主な回答をご紹介します。

大きく2つの方向性で、以下のような回答が見られました。


  • ①課題発見方法のヒントを得たい

ある分野に対してなんの興味もない生徒が、「これって面白いな。もっと知りたいな。」と思えるようなその分野の入り口を提示してもらうことができれば良い。その入り口は初歩的なものであれば、初歩的であるほど良い(誰かから与えられて面白いと思うよりも、「自分が」発見したという感動こそが探究において大変大切であると思うからである。)
世の中の様々な分野の課題を提示すること。
大学生の論文は探究活動の良いお手本になると思うので、大学のサイトに簡単に論文を見られる場があればいいと思う。
テーマ決定のきっかけとなるような話題を沢山用意して欲しい。
解決して欲しい問題等を高校生に提示して欲しいです

  • ②大学の研究内容を知りたい

大学が現在研究していること
自分の興味分野、調べたいことと同じことをテーマにして研究していらっしゃる先生がいること。
興味のある分野の専門書や知識を持っている人との交流
研究室訪問をもっと活発に行いたい
教授との意見交換


 

まとめ


昨年からスタートしたばかりの探究学習。

「やる意味がわからない」という回答の多さから、探究学習の授業が行われる意味がまだ学生に浸透しきっていない印象を持ちました。

一方で、地域による違いも見られます。現状の学校ごとの取り組み具合にばらつきがあることもわかります。


将来に活かせると回答した高校生の数は多く、自分ごと化して主体的に取り組んでいる学生が授業を通して成長を実感していることが伝わるような回答も見られました。

高校生が興味関心を持つことができるようなテーマを見つけられるような、高校・大学からのサポートが、今後必要になってくるのではないでしょうか。

 

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