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文系・理系ともに教科の苦手意識は小中学生で大きく形成、理科は「物理」「化学」などに細分化された高校生で躓く傾向も ~5,150名の学生の文理選択と学部・学問系統について調査~

更新日:3月1日




2023年6月~7月にかけて、Studyplusトレンド研究所は公益財団法人山田進太郎D&I財団と共同で「文理選択に関するアンケート調査」を実施しました。


調査では、


  • 理系科目への苦手意識が、文理選択に大きな影響

複数選択回答の調査項目「文系 or 理系を選択した理由は何ですか?」では、文系(n=1,221)選択の最多理由が「理系科目が苦手だったから」(回答率49.9%)。
  • 教員が生徒により良いサポートを提供できる可能性がある

複数選択回答の調査項目「文理選択をする際に、どのような情報源を活用しましたか?」では、最多理由が「学校の先生(担任)」(回答率52.1%)。
単一回答の調査項目「文理選択について、学校や教員から受けたサポートにどれくらい満足していますか?」では、半数は「どちらでもない」「やや不満」「不満」と回答しており、改善の余地が見られる。

といった結果を得ました。



上記結果を踏まえて、今回の調査では教科への苦手意識・得意意識が形成される時期・理由に着目し、生徒がより良い文理選択をするための高等学校における学習指導・進路指導のヒント、大学の理系分野における生徒募集にあたってのヒントを探りました。




 

◆本調査の概要(1回目)

  • 調査対象 : 全国の「Studyplus」ユーザー(高校生・浪人生・大学1~2年生)

  • 回答者  : 5,150名

    【学年分類】高校1年生:1,278名、高校2年生:1,433名、高校3年生:1,887名、

          浪人生:213名、大学1年生:252名、大学2年生:87名

    【文理分類】文系:2.391名、理系:2,644名、その他:115名

  • 調査方法 :  学習管理アプリ「Studyplus」上でアンケート回答を依頼し、オンラインで回答を回収。

  • 調査時期 :  2023年11月10日〜11月13日


   ※本リリースにおけるデータは小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。


 


①理系への苦手意識が文理選択に大きな影響


前回調査の結果を受けて、今回は自由記述で文理選択の理由を調査しました。


その上で記述された理由に関して、


 ・系統に対するポジティブ・ネガティブの割合


 ・回答理由をジャンル付けした割合


を算出・分析しました。



系統に対するポジティブ・ネガティブの割合を確認にすると、「系統への苦手意識」から文理選択した生徒は、文系が理系を20%以上、上回る回答を得ています。




回答理由をジャンル付けした割合を確認すると、文系は「理系の勉強が苦手」が最多。理系の「文系の勉強が苦手」を20%以上、上回る結果となりました。


やはり理系への苦手意識が文理選択においては大きな要素となっており、特に文系選択をする生徒にとっては顕著な影響を与えていることがわかります。



 

教科への苦手意識は小中学生で形成、理科は高校生で形成される傾向も


前回調査、今回調査で浮き彫りになった「理系への苦手意識」について、より深掘りしました。苦手意識が芽生えた時期・理由に注目しました。




英語・国語・社会・数学は、約7割が小中学生時点で苦手を自覚。英語は特に中学生で自覚する傾向が見られました。


英語、理系科目は高校1年生で苦手を自覚する割合も高く、理科は4割以上・数学は2割以上が高校生になってから苦手を自覚しています。


苦手になった時期に続いて、今度はその理由に着目します。




英語・国語は「難しい・できないから」の回答が多く、英語・社会は「暗記が苦手」、国語は「答えが曖昧」といった回答が多く見られました。



理系科目は、文系科目以上に「難しい・できないから」の回答率が高く、半数近い割合。数学は「計算が苦手」も多く見られる結果となりました。


数学・理科における頻出ワードに着目すると、以下のような傾向が見られました。



◆「数学」が苦手・嫌いな理由

理由1. 小中学生で「計算」が苦手に

小中学生の頃から、「計算」に躓き苦手になってしまったエピソードが多く見られました。

回答例)

『計算が苦手だから』

『どうやって計算を立てたら良いのか分からない事がよく起きるから。現在使っている学校指定の問題集の模範解答が答えしか書いておらず、軽く絶望した。』

『計算することの意味や数字の羅列が苦手で、小学生の頃からなかなか点数が取れなくなってしまったために苦手な科目になりました。』

『中学受験算数で単位換算が理解できなかった。また、中学受験算数の概念的な理解を必要とすることが私には難しく、どれだけ勉強しても伸びなかったことで嫌いになった。数学になってからは嫌いではなくなったが、ケアレスミスが多く、計算が苦手なので苦手意識がある。』


理由2. 成功体験が得られず負のループに

「計算できない」「理解できない」結果、苦手意識が増していく傾向が見られました。

回答例)

『計算ができない』『理解できない』

『高校の授業スピードが早くて理解できないまま次の単元に進んでしまい、混乱が積み重なっていった結果。』

『先生が言ってることはわかっても、自分1人ではできない。解法を覚えられない』

『捉え方の違いや考え方が完全に理解できず、学んだことを応用することができないから。』

『難しくて理解するのに時間がかかるし理解できない時も多いから』


◆「理科」が苦手・嫌いな理由

理由1. 高校入学後に細分化した「化学」で苦手に

暗記できない、理解できない、双方の意見が見られました。

回答例)

『化学 初手から分からなくて勉強したく無くなりました』

『化学の分子量などの計算方法が理解できないから。』

『化学は数学みたいに量をやっても力はつかないし理解しないとできるようにならないから』

『化学式や元素が覚えられず難しいと感じたから。』

理由2. 高校入学後に細分化した「物理」で苦手に

思考するのが難しい、公式を覚えるのも活用するのも難しい、という意見が目立ちました。

回答例)

『物理の目に見えないものを考えることが難しいと感じたから』

『生物は得意だが、まず数学が嫌いなので、それを使う物理とかは本当に嫌いだから。』

『物理が大嫌いです、公式を覚えても何も出来ないからです』

『中学で、光の単元でつまずき、物理が苦手であることに気づいたから。』

『物理の公式を覚えるのが大変なのと、その公式をいつ使えば良いのかや、始めの考え方に行きつくことが出来ないから。』



 

③ 高校生になってから理系を好きになる割合も一定あり、成功体験や学問の面白さに気付くきっかけ作りが重要



今度は、得意意識に着目します。

どのようなきっかけで教科を好きになるのか、また実際に文理選択をして学部を選ぶ際に、どのような理由を持っているのか。

高校生になってから理系科目を好き・得意になった生徒の声も含めて、今後の学習指導・進路指導のヒントになりそうな情報を集めました。



まずは得意になった時期ですが、苦手と同様の傾向で、7~8割は、小中学生の間に得意・好きを自覚。


理系科目は高校1年生で得意・好きを自覚する割合が比較的高く、理科は高校生に入ってから3割が好き・得意になったと回答しています。


続いて、得意教科の理由です。



文系科目においては、英語は「習い事・塾の影響」、社会は「教師や授業の影響」、国語は「読書が好き」といった回答が特徴的です。




理系科目は「楽しい・面白い」回答割合が文系科目よりも高く、数学は「答えが明確」・理科は「教師や授業の影響」といった回答が特徴的です。

得意・苦手意識が醸成されやすい小中学生以降、高校生になってから理系科目を得意・好きになった回答に着目すると、頻出ワードから以下のような特徴が見られました。



◆高校生になってから「数学」が得意・好きな理由

理由1. 先生の授業・指導

学校や塾の先生の指導によって教科への理解が増したことや、わかりやすさだけではない楽しさを覚えたという回答が多く見られました。

回答例)

『学校の先生の教え方がうまく、解けるようになったと実感したから。』

『教え方が上手くていつも優しく質問対応してくれる塾の先生と出会って頑張ったから。』

『先生が楽しそうに数学やってるのを見て数学できるのがかっこいいと思ったから』

『中学校では公式や定理などを暗記させられて暗記科目というイメージがあったけど、高校1年生の頃の教科担任の先生は公式の成り立ちも解説してくれて、暗記に頼らずに数学の問題を解けるようになったから。』

『面白い先生がいた。Youtubeでより興味を持った』

理由2. 自発的な学習を通じた “解ける” 体験

苦手・嫌いとは対極で、高校生に入ってから「解ける」実感を持てた生徒は数学を得意・好きになる傾向があり、そのきっかけが授業ではなく自発的な学習、という回答も見られました。


回答例)

『勉強すればするほどスイスイ解けるようになって得点や偏差値が上がったから。』

『問題が解けると楽しいし、解けないときもなぜ間違えたのか納得できる理由があることが多いから』

『様々な問題を解いていくうちに頭が数学に対応していって大体の問題が解けるようになった(気がした)から。』

『1年の復習をし始めたら、自分が意外と解けることに気づいて、ちゃんと勉強したら楽しくなったから』

『真面目に授業を受けるようになり、問題が解けるようになったため。』


◆高校生になってから「理科」が得意・好きな理由

理由1. 先生の授業・指導

学校の先生、予備校の先生、スタディサプリの先生など、さまざまな授業をきっかけに好きになる傾向が見られています。

回答例)

『教えてくれた先生がすごく楽しそうに授業してたから、聞いてる自分も楽しくて好きになった。』

『成績がいいから、ワークを解くのが楽しいから、化学のスタサプの先生が好きだから』

『先生の教え方が上手く教科書を読むことが楽しいと思える教科だったから。』

『予備校で先取り学習をしていて、その授業の先生が好きだったから。テストで良い点取れたから。』

『理系に進んでから先生の授業態度が明らかに前向きになってワクワクしてたから。』

理由2. 学問の面白さへの気付き

数学同様に「解ける」楽しみも一定数あるものの、学ぶこと自体の面白さが好みに繋がっています。

回答例)

『勉強していて楽しい。テストで点が取れなくても頑張ろうと思える教科。』

『現実の問題を式上で考えることができるのが面白いから。』

『生物がとても好きで生き物の体の作りを知ることが面白いから』

『有機化学がパズルみたいで楽しい』

最後に、進学予定の学部・学問系統を決めた理由を確認していきます。

まずは文系の学部・学問系統です。



経済・経営・商学・経営情報系、法律・政治・政策系は「学びたいこと・興味・関心」。


教育は「夢や目標・就きたい職業」が最多という結果です。



さらに文学・人文、心理・人間系を見てみると、「学びたいこと・興味・関心」の割合が他の文系学部より高いことがわかりました。


文系は、全体的に興味・関心の高さから学部を選ぶ傾向にあり、特に文学・人文、心理・人間系ではそれが顕著であることがわかります。


続いて理系です。




工学・理工学系、理学(物理・数学・化学等)系、農・生命・環境系は「学びたいこと・興味・関心」が最多。医学系、看護系、薬学系は「夢や目標・就きたい職業」が最多という結果が得られました。


更に頻出ワードに着目すると、理系の学部・学問系統への進学理由として、以下のような傾向が見られました。


◆理系の学部・学問系統への進学理由

理由1. 日常での体験で興味を持った

工学・理工学系、農・生命・環境系において、「興味」というワードが頻出しており、そのきっかけはバラエティ豊かでした。

回答例)

『企業の博覧会で半導体の構造に興味を持ち、自分で作ってみたいと思ったから。あと工学・情報系は将来性があると思う。』

『映画ジュラッシックパーク見て恐竜が好きになったから、遺伝子組み換えに興味があったから』

『高一の夏にやった適性診断でその系統が出てきてそこから興味を持ち、調べていくうちに魅力を感じたから。』

理由2. 高校までの好きな科目・得意科目をもっと勉強したい

理学(物理・数学・化学等)系は「数学」、農・生命・環境系は「生物」というワードが頻出していました。

回答例)

『数学の未解決問題の概要を理解したかった。数学の深淵に沈みたかった。』

『大学で4年間勉強することを考えた時に、1番楽しく続けられそうなのが数学だったから。』

『生物が好きで興味がある、生物科目が得意』

理由3. 家族やメディアを通じて知った職業の憧れ

医学系、看護系、薬学系、医療技術・リハビリ系において、回答内に職業名とそのきっかけが多く含まれていました。

回答例)

『テレビで医師の特集を見て興味を持った』

『1歳年の離れた弟が産まれたときに看護師さんの仕事ぶりに感動したから。』

『親戚が薬剤師で私もなりたいと思ったから。』



 

Studyplusトレンド研究所 調査所感


2023年6月~7月にかけて実施した「文理選択に関するアンケート調査」を受けて、今回は高等学校での指導は具体的にどのようなサポートが考えられるか、また大学の理系学部などで学生募集広報を進めるにあたってどのような訴求ができるか、といった観点から調査を実施しました。


今回の調査を通じてまず分かったこととして、理系に限らず教科への苦手意識は、小中学生で大きく形成されるということです。また、理科は「物理」「化学」など細分化される高校生で躓く傾向なども見られました。


そうした中で高等学校や大学で生徒に対してできる文理選択におけるサポートとして、理系が苦手な生徒や理系へ進学する生徒の声から2つのヒントが見えてきました。


1つ目は、成功体験を積み重ねるサポートです。理系に限らず、各科目で「できる」実感が「好き」を生む傾向が見えています。

2つ目は、学問の楽しさに気付くきっかけ作りです。学問の面白さ・深さが分かるような授業、先生自身が楽しんで教えている姿、また日常体験から興味関心を持つ傾向が見えました。


高校生は吸収力が高く、多感な時期を過ごしています。

勉強時の成功体験、またさまざまな物事の楽しさに気づくようなきっかけを、学校に限らず家庭や日常のさまざまな場面で少しずつ増やすことができれば、よりよい進路選択に繋がるかもしれません。



 

Studyplusトレンド研究所では、学習管理アプリ「Studyplus」のユーザーである若者に向けて、定期的に調査を行っています。



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