
「学校のルールについての意識調査」で、生徒と先生双方の制服・校則についての意識を調査した結果、まだ多くの理不尽なルールが存在することを確認しつつ、合理性や公平性を求めてルールが緩和・廃止されているという事例にも多く触れることができました。
この記事では「学校のルールについての意識調査」でわかった、制服・校則に対する生徒・先生双方の意識調査の結果をご紹介します。
制服や校則の現状や問題意識はどのようになっているのか?
先生の視点からは制服や校則の運用についてどう考えているかなど調査分析しました。
<調査概要>
調査対象 | 全国の「Studyplus」ユーザー (現役の中学1年生~高校3年生) ※学年は2022年度時点 | 全国の高校の先生 |
回答数 | 5,697名 | 209名 |
調査方法 | 学習管理アプリ「Studyplus」でアンケート回答を依頼し、オンラインで回答を回収。 | FAXにてアンケート回答を依頼し、オンラインで回答を回収。 |
調査時期 | 2023年1月23日~1月29日 | 2023年1月30日~2月10日 |
回答してくれた人の属性について
まず、今回の調査に協力してくれた中高生の属性についてご紹介します。
性別は、女性が74%、男性が22%、「どちらとも言えない」が4%、学年は高校生が約70%、中学生30%でした。

学校の所在地についてはほぼ人口比率に応じた数になっております。

また、通っている学校の種類は以下の割合でした。

①制服が必要だと思う割合は、生徒・先生ともに半数以下
制服の有無について
今回の調査に参加してくれた中高生のうち、90%以上が制服のある学校に通っていました。

学校指定の制服は必要か?
「学校指定の制服は必要だと思いますか?」という質問で必要だと回答したのは、制服のある学校に通う人では41%、制服の無い学校に通う人では14%、先生では49%と、いずれも半数以下でした。

制服の有無を進路選択の基準にしたか?
「制服は進路を選ぶ基準になりましたか? / 私服通学可能なことは進路を選ぶ基準になりましたか?」という質問に対しては、制服がある学校よりも、制服がない学校に通う学生のほうが進路選択の基準にした割合が大きいという結果になりました。

制服・学校指定の持ち物について
「制服・学校指定の持ち物について、なにか思うこと、考えていること」を聞いたところ、以下のような回答を得ることができました。

全体では
理由が不明な細かい色の指定や防寒着のルールなどに対する不満がある
制服があることに対しても一定のメリットを感じている
ということがわかりました。
また、先生としては全体的に柔軟に緩和したり廃止したりしてよいのではという声が多い一方で
学校の個性に合わせればよい(レベル・地域性などもある)
服装が自由になると貧富の差などが顕著に見えやすくなるので、制服の意味もある
特に就職が多いところでは服装や身だしなみ指導は必要
という意見もありました。
② 未だに“地毛証明書の提出” “下着の色指定” 等のブラック校則が根強く残る。校則の厳しさは地域差もあり?
今存在する校則
次は、校則についての調査です。まずは今ある校則について聞きました。

アルバイトの禁止、メイクの禁止、特定の髪型・髪色の禁止がまだ多いことがわかりました。また、ブラック校則として話題になりやすい地毛証明書の提出や下着の色指定等も未だ20%前後存在することがわかりました。
校則は厳しいと思うか
次に「自分の通う学校の校則は厳しいと思うか?」という問いに対して、以下のような回答を得ました。

その中で、中高生の回答を地域別に見ると以下の傾向がありました。

九州は校則が緩いと思う高校生が全国でも圧倒的に少ない
一方で中国地方・東北地方・甲信越では厳しいと思う高校生が少ないというのが明らかに
そのそも長野では制服がないという答えが制服があるという高校を超えている
また、先生の回答は以下の通りです。

先生の学生時代は?
今回ご回答いただいた先生たち自身は、学生時代どれくらい校則を守る生徒だったか聞いてみました。

ほとんどの先生がとてもまじめな生徒だったようですが、中にはこんな思い出のある先生もいました。
先生たちの校則エピソード
オシャレに目覚めてパーマかけて指導されて直したことはある。
バイク3無い運動が高校1年で始まり、校長に法的根拠を示すように生徒会として質問文を書いた。生徒総会で校長は欠席し、大騒動になった。
生徒会執行部に入った時、白色指定だった靴下の色を紺色や黒も認めて欲しいと抗議し、総会でその案が通りました。自主的な活動が校則の変化につながると実感することができました
「これはおかしい!」と思う校則
「これはおかしい!」と思う校則について聞いたところ、事前の予想通り以下の項目が多く挙がりました。
※以下、表の数字は人数
| 高校 | 中学 |
服装指定・身だしなみ(ジャージ登校・スカートの長さ) | 95 | 82 |
スマホの禁止 | 138 | 21 |
持ち物の色指定(靴下・カーディガン・セーターなど) | 32 | 35 |
そんな中で、特に変わったルールがいくつかあったのでご紹介します。

追加・変更・廃止された校則
「最近、追加・変更・廃止された校則」を質問したところ、以下の意見が目立ちました。

この質問でも珍しい・気になった回答をピックアップしてみました。

全体として、以下のようにまとめることができました。
まだまだ防寒着が自由に選べないなどの声も多い中、いくつかの学校では気候に合わせた服装の規制や、髪型の細かい指定などが合理的な理由により廃止される事例が見られた。
ジェンダーの視点から、性別を指定した校則も辻褄が合わなくなってきている事例が見られる。
先生側も緩和・自由化でいいのではないかという意見が多いが、その分TPOに合わせた服装についての教育などが必要なのではないかという意見も。
[先生] なくていいと思う校則、もしくは追加したほうがいいと思う校則
また、先生には「なくていいと思う校則、もしくは追加したほうがいいと思う校則があればお書きください。」という質問をして、以下の回答を得ることができました。

先生からの意見をまとめると以下のようになりますので。学校のあり方も変わっていくのかもしれません。
全体的に冷静に、時代に合わせて変えるべきもの・残すべきものを見定めたうえでなくしていくべき。残していくべきものは残すべき という意見が大勢
なぜそのルールなのか、意味を問い、納得して守るべきか・なくすべきか議論していくのが良いのかもしれません。
一方、自己責任ですべて完結できるのであればそもそも校則もいらないのでは?
校則・ルールについて思うこと
「校則・ルールについて、なにか思うこと、考えていることなどあれば、自由にお書きください。」という問いに対しては、以下のような意見が集まりました。

③“男子用のスカート” “女子用のスラックス”、ジェンダー意識の高まりから生じた校則の変化とは?
制服・校則について調査する中で、ジェンダー意識について注目してみました。
制服・校則の中に潜むジェンダー問題
制服・持ち物について思うことの中に以下のような意見がありました。

また、「校則・ルールについて、なにか思うこと、考えていることなどあれば、自由にお書きください。」という問いの中でも、校則に存在する男女差として、以下のような点が挙げられました。


更に「最近、追加・変更・廃止された校則があれば、具体的にどのようなものか記述してください。」の回答の中でも以下のような事例がありました。
性差の解消の視点から「女性のスラックスの選択可」が増えることを予想できたが、そもそも校則にある男女の区別を廃止した例もいくつか見られた。
◦ 委員会活動での性別の指定廃止(男女1名ずつ→2名)
◦ ジェンダーの観点から男女別の頭髪のルールが廃止された例もあった。
制服・校則などの学校のルールには、ジェンダーに対する決めつけや固定化した価値観が前提となっているものが多く、ジェンダー意識が高まることで自然と緩和・廃止の流れになることがあるということに気付かされました。
ジェンダー意識の変化のその先
制服の選択肢として女子用にスラックスが用意されるなど、ジェンダー意識の変化に配慮した事例は増えてはいるものの、それはあくまで「第1歩」でしかないと気付かされる声もありました。
女子→男子制服のみのジェンダーレス化が進み、男子のスカートは進まないことを疑問視する声も。
◦ トランス女性にも対応するためには必要。
スラックスが可になったものの、風潮的に履きにくかったり、”女子用のスラックス”であることに不満がある人も
◦ そもそも元からある制服との組み合わせなので、バランスが悪い場合も。
◦ リボンとスラックスの相性の悪さを指摘する声も。
各学校でのジェンダー意識の変化への対応はまだ始まったばかりのようです。 多様性を大切にした取り組みは応援したいですが、単発で終わるのではなく常に考え続けてアップデートしていくことが大切だと感じました。
まとめ
今回の調査では、現在の制服や校則についての中高生・先生の意識を知ることができました。価値観が変化する時代の中で、生徒・先生がなぜそのルールがあるのか、本当に必要か、誰かを傷つけてしまってはいないかを改めて考えて理解し、学校生活をよりよいものにできるといいですね。
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